筆は正しく持つことで、より美しい文字を書くことができます。この記事では、筆の持つ位置や使う指、手首の角度などコツを分かりやすく解説しています。
※出品者によって納品物や利用条件が異なります。詳しくは公式サイトをご確認ください。
筆の持ち方と使う指
筆の持ち方は以下の2パターンが一般的で、どちらも正しい持ち方です。ただし、持ち方によって使う指が少し異なります。
単鉤法(たんこうほう)
1つ目の持ち方は、単鉤法(たんこうほう)です。
筆の軸部分を親指と人差し指で持ち、中指は下から添えて支える持ち方です。実際は、全部で3本の指を使って持っています。小さい字を書く際は、こちらの単鉤法(たんこうほう)の方が書きやすいです。

双鉤法(そうこうほう)
2つ目の持ち方は、双鉤法(そうこうほう)です。
双鉤法は親指・人差し指・中指の3本の指を使って筆軸を持ち、薬指を下から添えて支えます。
単鉤法(たんこうほう)よりも筆軸を持つ指の数が、(中指分)1本多いので、より力強く安定した字を書きやすくなります。大筆で漢字を書く場合は、こちらの双鉤法が書きやすいでしょう。

小筆は単鉤法で書く方がおすすめ!
小筆で書く場合は、親指と中指で持ち・薬指を下から添えて支える単鉤法がおすすめです。鉛筆や箸の正しい持ち方に似ているとも言われており、細かい字が書きやすい持ち方です。
ただし持つ際に、(鉛筆のように)斜めになりすぎないようにしましょう。
筆を持つ位置はどこが良い?
筆を持つ位置に、実は正解はありません。持つ位置を変えることで、書風が変化するからです。どんな文字を書きたいかによって、持つ位置を変えると良いでしょう。
中心(筆の真ん中)を基本として、上と下で持つ位置が異なる場合にどのような書風になるかをまとめました。
中心より上を持つ場合
中心より上を持つと、より大胆で軽やかな字が書けます。書かずに、ただ筆の上部を持ってみてください。持つ手の位置から毛先までが離れているので、大きく動かせることが分かります。のびのびとした字を書きたい場合は、中心より上を持ちましょう。
実際に、この方も筆を持つ位置に違和感があり、少し上を持って書いただけで「線がさっきより伸びた」とツイートしていました。
中心より下を持つ場合
中心より下を持つと、安定した力強い字を書くことができます。
こちらも、筆の下部分を持ってみてください。先ほどの上部分で持つよりも毛先までの長さが短くなる=近付くため、自分でコントロールしながら書きやすくなります。
このように筆の持つ位置が違うだけで、字体はもちろん、筆の動きも変わります。
大筆で小さい文字を書くなら、下を持つと書きやすい
大筆で小さい文字を書きたい場合は、筆の下の方を持ちましょう。下部を持つことで安定し、細かい動きで書けるようになるからです。
小筆は毛束の近くを持とう!
小筆で書く場合は、毛束の近く=つまり中心より下を持ちましょう。大筆と違って筆そのものが細いので、中心より上を持つと書きにくく安定しません。
味のある書風や、筆文字アート向け
より動きのある字にしたいという場合は、反対に中心より上を持つことで安定しないことを生かすと良いです。動画にて比較しているツイートを見つけたので、シェアします。
筆が大きく動く分、軽やかな文字が書けています。筆文字アートなど、味のある書風・書体にしたい時は上の方を持って書いてみてください。
筆の構え方について
続いて、筆の構え方についてまとめました。筆の構え方には、以下3つの方法があります。
- 懸腕法
- 提腕法
- 枕腕法
それぞれ、写真を交えながら分かりやすく説明します。
懸腕法(けんわんほう)
懸腕法(けんわんほう)は、もっとも一般的な構え方と言われています。肘を浮かせて、腕は机と平行にして構えます。脇は拳1つ分くらいの隙間を作りましょう。
肘はもちろん腕も宙に浮かせているため、腕全体を自由に動かしながら書くことができます。

提腕法(ていわんほう)
続いて、提腕法(ていわんほう)と呼ばれる構え方です。腕を机に軽く触れる程度に置いて、書く方法です。鉛筆で書くときとほぼ同じ構え方といえば、イメージしやすいでしょうか。
机に腕を置いて支えているため、安定した筆さばきが可能です。懸腕法と比べて書ける範囲が狭まりますが、その分小さい字を書くときには効果的です。

枕腕法(ちんわんほう)
3つ目は枕腕法(ちんわんほう)といい、左手を右手首の下に置いている構え方です。提腕法のように、小さく安定したも字を書くのに適しています。小筆で書く際に、よく使われる構え方です。長い文章を書く場合は、右手が動くのと同時に下に置く左手も動かします。
左手を下に置いているので、右手が汚れる心配もありません。

筆を持つ角度は?
筆の持ち方や位置・構え方が理解できたら、角度も意識してみましょう。
大筆
大筆を持つ角度は、基本的に机・用紙に対して垂直です。しかしずっと垂直では無く、書く文字の”はらい”・筆の終わりなどに合わせて「進行方向に傾けながら書く」ことを意識してみましょう。
書道家である武田双龍氏が、分かりやすく動画付きで解説していたブログを見つけたのでここで紹介します。
基本的には半紙に対して垂直に立てることが最も重要なのですが、それをわかっていたとしても、進行方向に対して逆側に筆管が倒れてしまうものです。
そこで、生徒の皆さんに指導する場合、「進行方向に傾けて書いて下さい」と伝えてちょうど垂直を保つことができます。実は、筆管は、進行方向に向けて傾けていった方が強い筆圧となるという要素もあるのです。
大筆の立て方|武田双龍
進行方向に合わせて傾けながら書くことで、墨が薄くなる・かすれるといったことを防ぐことができます。また、進行方向に傾けることで=垂直を維持しながら書くことができるとのこと。
こちらのブログ内の動画を観ると、筆をどのような角度にして書いているのかが分かります。ぜひ参考にしてください。
小筆
小筆は、垂直もしくは80度ほどがベストです。寝かせすぎると、紙に触れる筆先の量が多くなってしまい線が太くなるので注意が必要です。
鉛筆の持ち方に似ているので、筆を鉛筆のように持ってみて‥そこから少し立てると書きやすくなります。まっすぐに垂直・80度くらい‥など、書きやすい角度は人それぞれです。実際に紙に書きながら、自分に合った角度を見つけましょう。
筆の持ち方×構え方、ベストな組み合わせとは?
最後に、筆の持ち方と構え方ーベストな組み合わせをまとめました。
大きくはっきりとした力強い字を書きたい
大きくはっきりとした力強い字を書きたいなら、「双鉤法×懸腕法」がおすすめです。
主に3本の指を使って持つ双鉤法なら、書いているときにも筆軸がブレません。また、腕と肘を机に固定しない懸腕法であれば、大胆に大きな動きで書くことができます。
狭い範囲で書くなら、堤腕法もおすすめ
大きくはっきりとした力強い字を狭い範囲で書くならば、腕を机に軽く触れさせる提腕法も書きやすいです。固定する分、書ける範囲が狭まることを利用する形です。
小さくて細い文字、かな文字を書きたい
反対に小さくて細い文字・かな文字を書きたい場合は、「単鉤法×堤腕法もしくは枕腕法」の組み合わせがおすすめです。
親指と中指の2本で持つ単鉤法なら、双鉤法よりも力が入らないため細い字に向いています。構え方は提腕法、もしくは左手を下に敷く枕腕法が最適。この2つの構え方は大筆よりも、小筆向きです。
筆の持ち方と構え方の相性は、人によって違う!
筆の持ち方と構え方は書きたい字で変えることができますし、自分にとって「しっくりくる」持ち方・構え方が必ず存在します。筆者は小さくて細い文字を書く際、提腕法(左手の上に右手を置かない)の方が綺麗に書けました。
子どもの頃から双鉤法で書いており、小筆でかなを書くときは単鉤法で枕腕法と使い分けている人も居ます。求めている「線」を出すことが目的、深いです。
この方は今まで左手を枕にする枕腕法でしたが、提腕法の方が合っているような気がするとツイートしていました。
このように、自分に合う組み合わせ・書き方は人それぞれです。筆の持ち方と構え方を変えて色々な字を書きながら、自分に合った組み合わせを探してみると良いでしょう。